2006年10月の山行記録です

 
 念願の北ア・表銀座縦走に行った。
 7月の「燕岳〜常念岳」が悪天候のため「燕岳」に終わってしまったので再挑戦だ。ただ今回は「常念岳」へは行かず、東鎌尾根を辿り「槍ヶ岳」へ。さらには稜線を「南岳」まで3 000m峰を歩き、氷河公園を経て槍沢を上高地へ下る長丁場だ。2泊3日で回る予定だが、最終日の行程時間が長いのがちょっと不安なところだ。その時はもう一泊することも・・・。  直前の天気予報では、一日目は晴れそうだが、二日目以降が雨模様でこれも心配だ。

 
大天井岳  2,922m   北ア表銀座縦走 2006年09月30日
《1日目》 天気:晴れ
到着時間 出発時間 区間時間 休憩時間 総合時間
 中房温泉登山口 6:00
 第1ベンチ 6:35 6:35 0:35 0:35
 第2ベンチ 7:00 7:10 0:25 0:10 1:00
 第3ベンチ 7:37 7:37 0:27 1:37
 富士見ベンチ 8:10 8:27 0:33 0:17 2:10
 合戦小屋 8:58 9:25 0:31 0:27 2:58
 燕山荘 10:45 11:24 1:20 0:39 4:45
 大下りの頭 12:25 12:40 1:01 0:15 6:25
 切通し岩(喜作レリーフ) 14:10 14:30 1:30 0:20 8:10
 大天荘 15:10 15:30 0:40 0:20 9:10
 大天井岳 15:42 15:52 0:12 0:10 9:42
 大天荘 16:00 0:08 10:00
 合計時間 7時間22分 2時間38分 10時間00分
 
  前回の「燕岳」と同じ夜行列車「ムーンライト信州81号」に乗る。ヨーゼフとクーは私が帰宅する前に娘の家に預けられた。桜が可愛がってくれるだろう。
大天井と槍ヶ岳(合戦尾根から)


 立川を0時29分発なので我家を11時半過ぎに出発した。
 国分寺に着くと、信号機故障で遅れているとアナウンスしている。立川へは予定より遅れたが当然「ムーンライト信州81号」も遅れて来たので問題なし。
 そう言えば前回も事故で電車がかなり遅れていたっけ。なんで? 

 これも前回と同じ7号車(ただし席は違いました)に乗り、今度はしっかり寝るぞ!と気合を入れる?
 結局うつらうつらしているうちに電車は定刻どおり4時51分穂高駅に到着。
燕岳(合戦尾根から)

 昨日電話で予約しておいたタクシーに乗り、一路登山口の中房温泉に向かった。

 中房温泉には 5時35 分頃に着いた。7月と違ってずっと少なかったが、それでもかなりの登山客がいた。
 おにぎり一個の朝食をとり支度をする。ちょっと肌寒いけどそれ程ではない。

 ようやく明るくなった空のもと、つい2ヶ月前に通った登山道を歩き出す。
 すぐに急登が始まり、まだ眠っている身体にはきつい。
 前回は最初ペースが速かったので、おかーさんを先頭にゆっくり登って行く。すぐに身体が温まってきて、Tシャツ1枚になる。
燕岳(燕山荘から)

 30分ほど登りが続き、一度やや下ったところが第1ベンチ。
 ここは休まず先へ進む。さらに30分足らずで合戦小屋の荷揚げリフトのケーブルを潜ると第2ベンチに着く。
 ここで一回目の休憩をとった。
 ちょうど登山口から1時間。天気は上々、稜線に出るのが楽しみだ。

 10分休んで出発。まだ樹林帯で眺望はない。グングン登って木の根がうねっている第3ベンチを過ぎ、1時間ほど登ると富士見ベンチに到着。
 ここは南側が開けていて、前回は富士山の頭が見えたが、今日は晴れているが生憎富士山は見えなかった。それでも左前方には南ア連峰が微かに見える。
 
槍ヶ岳と笠ヶ岳(燕山荘から)

 ちょっと多めに15分の休憩をとって合戦小屋へ向かった。登山道には花崗岩が露出して来るようになる。
 合戦小屋まで行けば急登がなくなると自分を励まし、最近2時間以上はダメな身体に軽く活を入れる。

 富士見ベンチから35分でやっと合戦小屋に着いた。
 登山口からちょうど3時間。小屋前の広場に設置されたテーブルの一つに陣取り大休止。さすがにスイカはないので、うどんを一杯、おかーさんと二人で平らげた。温かくて美味かった。 出発前に写真を撮り、燕山荘に向かった。

 天気が良いので早く行きたいと心がはやる。樹林帯を登って行くと登山道のカーブ地点で前が開け、これから向かう「大天井岳」とその稜線が目の前に。その奥には「槍ヶ岳」がその穂先を青空に向けて突き上げている。
燕岳と燕山荘(右)を振り返る


 やがて「合戦沢の頭」に着く。7月にその山頂には立ったけど「姿」は拝んでいない「燕岳」が残雪を纏ったようなその姿を見せた。赤い屋根の燕山荘もはっきり見える。
 ここからは登山道もその傾斜を緩め、へばっていた脚も心なしか元気を取り戻したかのよう・・・。
 前回はイワカガミを始めかわいい花が咲き誇っていたけど今はもう咲いていない。
 合戦沢の頭からひと登りすると再び台地に出る。
 ここからはさらにはっきり燕岳と燕山荘の姿が近づいて見えてきた。森林限界なので高い木はないけど潅木が黄や紅に色づいている。

 「燕山荘」には10時45分到着。テーブルの置かれた小屋前の広場は多くの登山者で賑わっていた。やはり人気のある山なのだなーと再確認。ただ今回も西風が強い。
 今日は天気がよく絶好の見晴らしだ。
稜線から大天井岳を


 南にはこれから行く「大天井岳」と稜線を登山道が白く刻まれている。右に穂高連峰(北穂・前穂)から大キレットとそれに続く「南岳」「中岳」「大喰岳」の3 000m峰(最終日に歩く予定)、そして「槍ヶ岳」、さらに先の稜線に「笠ヶ岳」、少しはなれて双六岳から三俣蓮華、鷲羽岳、水晶岳(黒岳)、野口五郎岳と連なる山並み。
 北へ眼を向けると「立山」と「剱岳」、後立山の針ノ木岳?が遠望できる。
 あまりの壮観に時の経つのを忘れてしまいそうだ。
 一眼デジカメを持って来なかったのが残念だ。天気が悪いと思ってコンパクトデジ(IXY800is)にしたのだ。

 結局40分ほども景色に見とれてしまった。今日はまだこれから大天井まで行かなければならない。あまりのんびりもしていられない。次なる目的地「大天荘」へ出発した。
 前方にはハイマツの中に登山道が白く伸びている。さぁ行くか!
蛙岩で

 今回の第1目的、槍を見ながら稜線歩きの始まりだ。道はやや下りながら続いて行く。左右とも切れ落ちているが幅が広いのでのんびりムード。路傍にはコマクサの葉っぱだけがそこ彼処にある。天上沢を隔てて、あの最難関ルートの北鎌尾根が槍ヶ岳に向かって立ち上がっている。尾根はギザギザだ。

 やがて前方に奇岩が見えてきた。蛙岩(ゲーロ岩)だ。大きな衝立岩の割れ目?を通る。再び大きな岩のない登山道になり、雄大な景色を見ながら進む。
 1時間ほどで大下りの頭に到着した。眼の前は一気に100mぐらい下っている。あー勿体無い。
 振り返ると歩いてきた稜線を堺に、安曇野側はガスが掛かって真っ白。左の岐阜側はきれいに晴れている。不思議な現象だ。

 ここで小休止。眼の前には「大天井岳」がドーンと構えている。その山肌に白く登山道が左右に分かれ2本付いている。私たち左の道を大天荘へ向かうのだ。
 
紅葉と黄葉

 ザレ場の大下りを慎重に下ると登り返しが始まった。
 登り切ると今度は尾根道ではなく山腹をトラバースするように進んで行く。かなり大天井岳に近づいたところで初めての鎖場に出た。
 ここが切通し岩で、下りると両側が切れ落ちている。対面の岩に、このルートを開拓した小林喜作さんのレリーフが埋め込まれている。

 ここから梯子を登りザレ場を登ると、白ペンキで書かれた分岐に出る。右へ行くと「大天井岳」を巻いて「大天井ヒュッテ」へと続く。
 私たちは「大天井岳」を登るため左の道を行く。登山道は山腹を斜めにトラバースして肩に続いている。砂利と岩の道を黙々と登って行く。傾斜は緩いが今日はもう充分に歩いた(久しぶりの長距離?)ので体はヘロヘロ。早く小屋に着きたいが歩みはゆっくり。そんな私たちを岩雲雀が和ませてくれた。

 3時10分、やっと「大天荘」に到着した。
 6時に中房温泉を発って9時間と10分。予定より30分ぐらい遅れたが、何とか3時半前には着けたのでOK。
切通し岩の下降

 早速チェックインして割り当てられたベッドにザックを置く。泊り客は少なくて8〜10人並んで寝られるベッドに私たち2人だけ。下の段や隣も同じようなものだった。それとここのスタッフはとても対応が良い。元は町営だったけど現在は燕山荘グループが管理運営しているそうだ。どうりで納得。燕山荘も良かったもん。

 ちょっと休んで山頂を目指した。小屋の横手から裏へ回りゴロゴロ岩の道を白いペンキに導かれ山頂へ。10分ほどで到着。風が強くてちょっと寒い。もう景色は十分堪能したので写真を撮って直ぐに下り小屋へ戻った。

 部屋へ戻ると夕食まで一眠り。あっという間に眠りについていた。5時半に食事ですよと起こされるまでぐっすり1時間半寝てしまった。この小屋は夕食の肉か魚をチョイスできる。なかな
大天井岳山頂で
か気の利いたシステムだ。私は鶏肉の竜田揚げ、おかーさんはブリの照り焼きをお願いした。アルコールを入れなかったので、ご飯もおかずも美味しかった。

 燕山荘までは登山者が多かったけど、大天井岳への稜線歩きは登山者が少なく、今日は静かな山歩きを楽しめた。何しろ燕山荘から私たちの前に出たのが2組、逆方向からのパーティーが3組しかなかったのだから。

さぁ明日はいよいよ東鎌尾根に挑戦だ。天気がいいことを期待して7時にはまた寝てしまった。こうして1日目は無事に終了。

 《2日目》
到着時間 出発時間 区間時間 休憩時間 総合時間
 大天荘 5:00
 大天井ヒュッテ 5:44 5:55 0:44 0:11 0:44
 ビックリ平 6:30 6:30 0:35 1:30
 休憩 7:05 7:20 0:35 0:15 2:05
 赤岩岳 7:40 7:40 0:20 2:40
 西岳山荘 8:38 9:05 0:58 0:27 3:38
 水俣乗越 10:20 10:33 1:15 0:13 5:20
 休憩 12:00 12:15 1:27 0:15 7:00
 ヒュッテ大槍 13:00 13:30 0:45 0:30 8:00
 槍ヶ岳山荘 14:30 1:00 9:30
 合計時間 7時間39分 1時間51分 9時間30分

 明けて2日目、今日は西岳まで稜線を歩き、いよいよ今回一番手ごわい「東鎌尾根」を「槍ヶ岳」までのコースだ。
夜明け前の槍ヶ岳 夜明けの常念岳

 前日の天気予報では午前中はもつが、午後早ければお昼から雨になるだろうとの事だった。2時半頃には槍岳山荘に着く予定なのでそれ程雨中の行進はしなくて済むだろう。
 朝食はお弁当にしてもらったので、4時過ぎに起床して5時には小屋を出発した。外に出るとやはり寒い。昨夜は風が強かったが、幸い強風は収まったので良かった。

 早速歩き出すが、日の出は5時44分なので辺りはまだ暗い。
大天井ヒュッテへの下降

 小屋の前のテント場を横切りハイマツ帯に付けられた登山道を行く。下は石だらけで歩きにくい。ヘッドランプの灯りを頼りに慎重に進んだ。
 やや下ったところで道は大きく右に折れ、大天井の山腹をトラバースしながら下って行く。段々岩が出てきて、さらに歩きにくくなってきた頃、空がゆっくり明るくなってきた。遠くでライチョウの声が聞こえてくる。

 以前蝶が岳から常念を歩いた時はライチョウの親子が登山道に出てきて一緒に?歩いたことがあるが、今回はまったく姿を見かけない。
 正面には槍ヶ岳がシルエットで浮かんでいる。落石のありそうな場所も無事に通過、
朝日を浴びる立山と剱岳

 眼下に大天井ヒュッテが見えてきた。2、3組のパーティーが発って行く姿が見える。
 最後の急斜面をジグザグに下り切り小屋の前の広場についた。

 コースタイムは30分だが思いのほか時間が掛かってしまった。テーブルが設置されていたので予定外の小休止。
 歩いて身体も温まったので着ているものを1枚脱いで身軽にした。
 小屋から一人の登山者が出て来たので話したら、やはり昨日、中房から入って大天井岳を登ってからヒュッテまで来たそうだ。私たちもそうすれば良かったかなとちょっと思った。
 そうすれば暗いうちに出なくても良かったのに。
大天井岳を振り返る


 ヒュッテからは牛首展望台はパスして真っ直ぐ喜作新道を行く。
 すぐに稜線に出るかと思っていたが、樹林帯を下って行くのでちょっと心配になった。
 周りの木々はもう色付いている。ダケカンバの黄色が主であるがナナカマドやカエデの紅も混じりとても綺麗だ。振り返れば「大天井岳」の稜線が、左前方には「常念岳」がその大きな山容を見せている。

 私が写真を撮りながら歩いているうちにおかーさんはどんどん先に行ってしまい見えなくなってしまった。まっ、ここは岩場もないし危険な道ではないのでいいけど。
常念岳

 30分ほど樹林帯を上り下りして、急に尾根に向かって登ると「ビックリ平」と言う小さな広場にでた。
 やっとここから眺望の利く稜線歩きになった。小石混じりの登山道を南に向かう。これから向かう西岳まで山肌は見事に黄葉している。
 彼の北鎌尾根は近づくにつれその峻険な尾根をはっきりさせてくる。あんな所を登る人がいるんだ・・・。

 行く手に北穂高や前穂高、右手に槍ヶ岳、左手には八ヶ岳・南アルプス・中央アルプスの山並み。振り返れば立山・剱岳、針の木とその奥に鹿島槍(多分)。今日もまたあっちを見たりこっちを見たりしながら稜線歩きを楽しむ。
 
赤岩岳
これから向かう東鎌尾根は随分低いところから槍ヶ岳目指して立ち上がっている。まだ登りがないので足取りも軽い。

 そろそろ「赤岩岳」にさしかかろうかとする頃、一人の登山者と出会った。
 写真を撮りに入ってもう4日も山にいるとの事だ。槍から今日はこの稜線まで来て、そろそろ戻って水俣乗越から下山すると言っていた。
 槍沢方面よりこちら側の方が断然黄葉していて綺麗だとも言っていた。
 ここで朝食のお弁当を食べた。私の好きなお稲荷さん、絶景を見ながらの美味しい朝食だった。

 
やっと稜線に
一息ついたところで「赤岩岳」を登り始めた。最初見えたピークまで10分ほどで到達したが、まだ先があった。
 山頂は登山道からほんの少し登ったところで、何にもないところだった。ここから再び下りが主体の登山道を行く。じきに稜線を外れ左側の山腹を行くので槍方面は見えなくなる。
 昨日は見えなかった富士山が、今日は常念岳と南アルプスの間に頭を出している。
 登ったり下ったりして小1時間ほど行くと、「西岳山頂」の道標があり、もう「ヒュッテ西岳」は近いなと、山頂への道を右に分けそのまま進むとヒュッテの赤い屋根が見えてきた。

 
槍ヶ岳と左に伸びる東鎌尾根
「ヒュッテ西岳」は「西岳」の山頂直下ちょっと突き出たホントに狭い台地に建っていた。ここで大休止。コーヒーを頼み、表のベンチに座って景色を眺めながらの一杯は美味しかった。休んでいると5人のパーティーと単独行の登山者が着いた。
 30分ほど休んで出発。
 先ずは東鎌尾根の起点水俣乗越へ下る。小屋の前から斜めに斜面を下って行く。やがて木の梯子が出てきたがこれはたいした事はない。ここで登ってくる2人にあったが、2人ともヘルメットを被った本格派だった。

 さらにザレた斜面を下って行く。大分下ったところで今度は登り返しがあった。
 ここでウッカリミスをしてしまった。前の単独行の登山者が登りきった辺りで右に曲がったので私もそのまま付いてしまった。
富士山と甲斐駒

 踏み跡は付いていたのだが、そのうち木が邪魔してとても歩きにくい。この時アレッと思った。木が繁った場所を抜けると草つきのちょっと広い場所に出た。さらに道はその先に続いている。先行者が草に腰を降ろしていた。「道がおかしいですね」と言うと、「どうも違うみたいです」と地図を取り出していた。
 おかーさんに待っていて貰い、私がその先に行ってみたが、その先はまた木の茂みになってしまっていた。ミスコースでした。間違いに気づき、とにかく元の登山道まで戻った。
 よく見ると岩に赤ペンキで矢印がちゃんと付いていた。よく見なかった私たちのミスでした。
 時間はロスしたけど無事にルートへ復帰。小さな岩山を過ぎて再び小石で滑る登山道をジグザグに下ると「水俣乗越」へ出た。
八ヶ岳、南ア、中央ア(上から)


 予定時間ピッタリの10時20分だった。ここからいよいよ「槍ヶ岳」へ向けて「東鎌尾根」が始まる。稜線を歩いていた時に見たけど何ヶ所かのピークを含めずっと登りの急峻な手強いルートだ。
 西岳で会った5人グループにここで追いつかれたので先に行ってもらった。15分ほど休んで私たちも出発。
 最初から急登が始まる。どんどん高度上げ、振り返ると西岳から下った登山道が見える。
 ひとしきり登るとちょっと尾根を外れ、右の山腹を斜めに登って行く。

 ここで下りてくる2人に会った。一人は40代の男性、その後ろにつかまりながら来る70代のおじいさんの親子らしきパーティーだ。
 道を譲ってすれ違いの時、見るとおじいさんが額にタオルを巻いている。そのタオルと肩に血が滲んでいる。思わず「大丈夫ですか?」と声を掛けると「ハイッ大丈夫です。この先まだ梯子はかなりありますか?」と聞いてきた。「梯子はほとんどありません。薬を持っているので差し上げましょうか?」と言うと「ありがとう。水俣乗越から下山するので何とか大丈夫です」と息子さんは応え下山して行った。

 暫く行くと緩やかな平坦な場所に出た。先に行く5人のパーティーが梯子に取り掛かっているのが見える。
 やがて私たちもその木の梯子に取り掛かる。幅が広いので危険はない。でも何ヶ所も掛かっている。中には立って歩けるものもあるが慎重(怖がりや)なおかーさんは手も使っている。
 ピークを越えると今度は鞍部に向かって直角の3連鉄梯子が待っていた。
 これは結構怖かった。特に降りたところが細くて体の向きを変えるのがとても怖かった。
前穂、北穂、大キレット(左から)

 何しろ両側は見事に切れ落ちているのだ。風があったら危険なところだ。

 再び梯子を何本も登り、岩を登り振り替えると先程の台地が見えた。あのおじいさんを置いて、息子さんが一人下山して行くのが見えた。多分歩けなくなって槍沢ロッヂに救援を頼みに行ったのだろう。

 しばらく行くと若い夫婦のパーティーと行き会った。私達とそのご夫婦、4人とも靴が同じ銘柄(ハウワグ)だったこともあってちょっと話をした。
 分かれ際におじいさんに渡してと痛み止めの薬を託した。
東鎌尾根


 水俣乗越から1時間半ぐらい歩いたところで休憩をとった。すると上空をヘリが飛来して、先程の台地の上でホバリングし始めた。良かった!救援が来てくれたのだろう。これでひとまず安心。
 歩き始めようとすると、ついに雨が降ってきた。よく見るとあられ混じりだ。大した降りではないのでカッパは上だけ着ける。それにしても天気予報は正確になったものだ。ちょうど12時に降り始めるとは・・・。

 ここからはもう梯子はなかった(多分)けど岩場の連続だ。30分ぐらい登ったところで「ヒュッテ大槍まで10分」の小さな案内板があった。
西岳

 おかーさんにあと10分!と声を掛け先へ進む。「6分」、「3分」の案内板を過ぎると広場に出た。1時ジャストに「ヒュッテ大槍」に到着した。

 ヒュッテに入り、食事をしていいですか?と聞くと、どうぞとのありがたいお言葉。N山荘は持ち込み禁止と断り書きがあった。お弁当がまだ一人分残っていたのでお昼にした。スープと味噌汁を頼んで暖かい昼食が摂れた。

 ここまでくれば槍ヶ岳山荘まではあと小1時間。雨はやや強い降りになってきたけどもう少しと気合を入れる。幸い睡眠を充分とったのと脚が慣れたのか、昨日ほどはバテテない。
西岳からの下降

 次々に現れる大きな岩を登り左下に殺生ヒュッテをやり過ごし、50分ほど行くと道は左にトラバース。槍沢からの登山道を合わせ登りきると「槍岳山荘」に着いた。
 予定より30分遅れたが無事、難所をクリアできた。

 山荘に入るとなにやら騒々しい。団体ツアーで来た人たちがこの雨で槍の穂先も見えない中、山頂を目指して出発するところだった。
 今回私たちは槍へ登るのが目的ではなく、一番の目的は表銀座を歩くこと、もう一つは槍から南岳を歩く事だった(私は大キレットを北穂高へ行きたかったのだが、おかーさんに絶対行かないと断固拒否された)。
紅葉

 槍には天気が良くて時間があれば登ろうとは思っていたが、今日のこの雨では遠慮した。

 それにしても今日は随分梯子を登り降りしたな。登るだけで20個(途中まで数えてたけど・・・)はあったろう。

 先ずはチェックインして指定された部屋?へ行った。最繁忙期には片側10人の2段ベッドが向かい合って40名収容(敷布団はその半分)のところ、私たちともう1組のペアだけ。またまたガラ空きで余裕を持って寝られる。
 ザックを置いてキッチン槍へ、コーヒーを頼んだが売り切れてインスタントしかないとの事で、残念だが紅茶で我慢した。
恐怖の4連梯子

 ティータイムの後は他の登山客と雑談して夕食までの時間を過ごした。個人山行の人、団体のツアーで来た人とお喋りを楽しんだ。グループ山行も楽しいが、どうしてもグループ内で盛り上がってしまいなかなか他の登山者と話す機会がないので、個人山行の良いところだ。
槍の根元をトラバース


 夕飯になり食堂に行くと、やはり今日の宿泊者は少なく、6、70名ぐらいだった。夕食後は明日の行動をどうするかおかーさんと検討した。このころには雨も本降りになっていて、天気予報でも明日の昼過ぎまで続くと言っていた。
 このため、明日は朝食後、真っ直ぐ槍沢を下山することにした。残念だが仕方ない。
 今日は最後のところで雨に降られたが、午前中眺望もよく楽しい山歩きができて良かった。

 《3日目》
到着時間 出発時間 区間時間 休憩時間 総合時間
 槍ヶ岳山荘 6:15
 坊主岩小屋 6:47 6:47 0:32 0:32
 天狗原分岐 7:17 7:17 0:30 1:02
 水俣分岐 7:54 7:54 0:37 1:39
 槍沢ロッヂ 8:30 8:50 0:36 0:20 2:15
 横尾 10:04 10:10 1:14 0:06 3:49
 徳沢園 11:02 11:32 0:52 0:30 4:47
 明神 12:16 12:20 0:43 0:04 6:01
 上高地 13:03 0:43 6:48
 合計時間 5時間48分 1時間00分 6時間48分

 前日早く寝たので1時ごろ目が覚めた。外の様子を窺うと雨は強くなっている。その上、風が強いらしく窓がガタガタいっている。
アザミの群生


 朝は5時に起床。ロビーに行くと朝食をお弁当にした人たちが食事の最中だった。そりゃこの雨では外では食べられませんよね。
 5時半からの朝食に食堂へ行く。温かい味噌汁が美味しかった。
 今回は荷を少なくするためストーブ等は持って来てない、そのためお弁当では温かいものは味わえないのだ。

 ゆっくりご飯を食べ、6時出発を目途に支度をした。
 山荘前で写真を撮った後、6時15分出発。
 以前来た時はヘロヘロになりながら登ったジグザグ道を雨の中軽快に下る。
 帰るとなったら一時も早く帰って、ヨーゼフとクーに会いたい私たちです。
ウド トリカブト


 すぐに先行する5人のパーティーに追いついてしまったが、道が細いので後を続く。
 坊主岩小屋の手前、ゴロゴロ岩になったところで先に行かせてもらった。
 岩屋を過ぎてしばらく行くと沢を渡り左岸にでる。
 枝沢を何本か渡渉する。水量は増えているのだろうが岩を伝って越えて行く。一ヶ所、幅が広く水量もあったのでおかーさんをサポートした。
ソバナ、ホタルブクロ(上から)


 天狗原分岐を過ぎた辺りから予想に反してまだまだ花が咲いていた。アザミが何十本も南を向いて咲いていた。その傍にフウロが一輪咲いていたので写真に撮ったが残念!ピンボケでした。
 水俣乗越付近から樹林帯になってくる。ババ平・槍沢テント場(テントが2張)を過ぎると槍沢ロッヂは近い。樹林帯の中を進むとヘリポートがありその先にロッヂがあった。
 ここまで写真を撮ったりしたが休憩はなし。
 標高差約1,200mを一気に下って来てさすがに疲れ、ロッヂに着いたときはホッとした。

 ロッヂは閑散としていた。温かいコーヒーを飲みたかったが、ここでも売り切れ。缶コーヒーで我慢した。
 これから天狗原に向かうという人が1名いた。小降りになったとはいえまだ雨が降っている。どうすんのかなー。

 20分たっぷり休んで出発。
 二の俣、一の俣と増水した沢の橋を渡り単調な樹林帯の中ぬかるみを避けながら1時間と15分歩いてやっと横尾に到着した。
 槍沢ロッヂまでも2組のツアーらしきグループがいたけど、この横尾までは数組のグループとすれ違った。ひとごとながらこの雨で登りは大変だな・・・。
 徳沢園でうどんを食べて、明神は立ち休み。
河童橋のお猿


 上高地・河童橋には1時過ぎに着いた。河童橋の傍の木には猿が2匹いた。観光客がカメラを向けてもノンビリ枝に座っていた。
 バスターミナルに行くと1時20分発の新島々
新島々で
行きのバスに飛び乗り、あとはバスの中で居眠りしているうちに新島々へ着いた。
 2時25分発の松本行き電車に乗ると、東鎌尾根で会った若夫婦と偶然再会した。
 松本4時3分発のスーパーあずさで八王子まで、中央線・国分寺線と乗り継ぎ7時前には帰宅できた。
 荷物を放り出し、早速桜の家にヨーゼフとクーを引き取りに行った。ヨーゼフとクーの喜びよう、それは凄かったです。



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