2006年5月の山行記録です


 5月の連休には3月頃から尾瀬に行こうと思っていた。尾瀬には何回も訪れているが、まだ雪の季節には行っていない。一度雪の尾瀬ヶ原を見てみたかった。いろいろ人に聞いたり、ネットで調べているうちに、凍った尾瀬を歩いてみたい、さらには至仏山を滑ったら気持ちいいだろうな、と夢は広がっていった。さあどうなる事か?いろいろ予定外のことがあった2泊3日の尾瀬山行の始まりです。

 【1日目】 5月3日  天気:快晴

 今日は前日泊で尾瀬戸倉の旅館「玉泉」に泊まり、明日の『至仏山』登山に備えることにした。
 今回の計画は1日目は武尊高原・菖蒲沢のザゼンソウ、片品の水芭蕉の森で水芭蕉の観賞後戸倉で一泊。

 2日目に早出で鳩待峠から至仏山に登り、山の鼻へスキーで下り、尾瀬ヶ原を縦断して見晴しへ。コーヒーが美味しい「弥四郎小屋」に泊まる。

 3日目は再び尾瀬ヶ原を縦断し、山の鼻経由鳩待峠に戻るというものだ。スキーとスキー靴を背負って白砂峠越えや三平峠を越え大清水まで歩くのはきついので、今回は残念だけど尾瀬沼歩きは断念した。
 今回はヨーゼフとクーはもちろん連れて行かれない。またまた桜ちゃんのところにお世話になる。


 朝早く行っても時間を持て余してしまうので、ゆっくり出ることにした。ただ連休の初日でもあり、高速道路の下りは大渋滞が予想される。
 7時半ごろ家を出た。カーラジオで交通情報を聞くと、案の定関越高速は大渋滞だ。練馬から花園まで50キロ以上の渋滞、3時間掛かると言っている。それじゃ急がないので花園ICまで一般道で行くことにした。

 走っている内に渋滞の先頭は花園の先までになったので本庄児玉ICまで行って高速に入った。時間的にはほぼ同じぐらいになってしまったけど、走っているほうが精神的には楽だった。


 沼田ICで高速を降り、お昼も近いのでインター近くのファミレスで昼食をとり、国道120号線を片品村へ向った。

 先ずは武尊高原へ平川で左折、後は道標に従って菖蒲沢へ。

 狭い駐車スペースに車を停め、山の斜面にできた湿原に入って行く。木道が敷設されているので歩き易い。一歩はいるともう木道の左右には「ザゼンソウ」がいっぱい顔を出している。ザゼンソウは今まで尾瀬の竜宮でたった1回しか見たことがなく、その特徴的な姿を見て感動したのを覚えている。
 それ以来どうしてもまた見たかったのでこんなにいっぱい見られて大満足だった。ただ木道の方を向いているのが何故か少なくて写真を撮るのに苦労したけど、人が少なくゆっくり見られて良かった。

 次に片品の水芭蕉の森へ水芭蕉へ会いに行った。
 一旦120号線に戻り、蒲田で左折、尾瀬大橋を渡り401号線を尾瀬方面へ。片品川に沿って進み看板に導かれテニス村を通りふれあい広場の駐車場に車を停め5分ほど山の中へ行くと水芭蕉の群生地がありました。
 水が流れる傾斜地にあの清廉な水芭蕉がいっぱい咲いていた。まだ蕾?子供?のもある。ここも木道を歩いて見て回るようになっている。先程の菖蒲沢と違い人がかなり出ていた。やっぱり認知度の違いかな。
 でも水芭蕉を見ていると人気のあるのが分かる。

 4時ごろ今夜の宿戸倉の「玉泉」に着いた。
 玉泉は戸倉バス停の前にあり、帰ってくるまで車を預かってくれ、帰りにはお風呂(温泉)にも入れてくれる。今回は6時までに鳩待峠まで送ってくれるおまけまでしてくれることになっている。

 温泉に入り部屋でビールを飲んでいると、女将さんが来て6時には送って行かれないと言う。7時半にならないとゲートが開かず鳩待峠まで行けないのだ。
 バスの始発がまだこの時期は7時40分なのは分かっていた(それで送ってもらうのをお願いした)が、ゲートの件はうっかりしていた。ゲートで待つわけには行かないのでマイカーで行くことにした。これが後々に良かったことと悪かったことに繋がることに、この時点ではもちろん気がついていない私たちだった。
 夕飯は品数も多く、水芭蕉(これは日本酒です)を呑みながら美味しく頂き、明日の為早寝した。




 【2日目】 5月4日

至仏山   2,228m 2006年5月4日
天気:快晴
到着時間 出発時間 区間時間 休憩時間 総合時間
 鳩待峠 8:35
 休憩(1,866mの巻き道の終わり付近) 9:30 9:40 0:55 0:10 0:55
 休憩(小至仏の巻き道の前付近) 10:30 10:43 0:50 0:13 1:55
 至仏山 11:50 12:55 1:07 1:05 3:15
 鳩待峠 14:20 14:50 1:25 0:30 5:45
 休憩(山の鼻付近) 15:50 15:55 1:00 0:05 7:15
 牛首 16:24 16:24 0:29 7:49
 竜宮 17:15 17:28 0:51 0:13 8:40
 見晴し 17:56 0:28 9:21
 合計時間 7時間05分 2時間16分 9時間21分
 
 5時半に起床。天気は良さそうだ。宿の前をもう車が通って行く。
これから出発

 朝食のお弁当をもらい、宿の前で記念写真を撮り出発。
 快調に走り出したがものの5分も走らないうちに前方に車の列。とりあえず最後尾に着ける。
 確かゲートは津奈木にあるはずだが、地図で見るとここはまだ戸倉スキー場まで来てない。という事は戸倉スキー場との分岐で規制しているのだろう。と理解して車の中で朝食のおにぎりを食べた。7時半のゲート開放までまだ1時間以上あるので音楽を聴いたり地図を見たりして時間を潰す。そうしている内にも私たちの後にどんどん車の列が長くなっていった。そんなに鳩待の駐車場に停まれるのかなー?

 待つこと約1時間45分、やっと車の列が動き出した。
 通りがかりに見るとやっぱり戸倉スキー場の分岐で規制していたみたいだ。もし津奈木からだったらあの車列は膨大な数になってしまう。
至仏山(左に小至仏)


 津奈木で鳩待峠方面へ。因みに水上方面へは除雪されていないのでまだ通行止めだった。
 雪の壁に囲まれた道路を進み、鳩待峠近くに来ると路上駐車の車が増えてきた。
 一般車の駐車場はちょっと手前にあり、係員に誘導されて結構混んでいたが何とか鳩待休憩所に近い端方に停められた。

 早速登山靴を履き、スキー板を担いで休憩所前のベンチへ行った。広場だけ除雪されているがそれを囲むように雪の壁がある。ここにも大勢の人で賑わい、特に若いスキーヤーやボーダーが多かった。
 ザックを挟むようにスキー板を取り付け、雪の壁を背景に写真を撮りいよいよ出発。
燧ヶ岳と会津駒ヶ岳(下に尾瀬ヶ原)


 夏の登山道は樹林帯を行くが、木々の間の踏み跡を辿ってほぼ真っ直ぐに登って行く。木には赤いリボンが付いているが天気が良く遠くまで見渡せるので安心感がある。

 歩き始めてすぐ、おかーさんはアイゼンを着けた。私は雪が凍っていないのでそのままで行くことにした。
 先ずは 1,866mのピークに向かって進む。足元は雪だが締まっていて、潜っても足首ぐらいまで。それも踏み跡を辿るのでほとんど潜らない。岩や木の根がないので夏より歩き易い。傾斜も急じゃないので最初は余裕すらあった。ただ踏み跡はいろんな所についているのでどれがいいか選んで歩かないと遠回りしたりしてしまう。

 右手に真っ白な至仏山、その左に小至仏が見えてくる。もう小至仏を巻いてトラバースしている人たちが豆粒のように見える。
日光白根山

 次第に高度を上げ振り返ると燧ヶ岳や武尊も見えてくる。天気は快晴、景色最高。でも30分も歩くと背中のザックが重くて(一昨日、家で試しにザックにスキー靴を入れ、スキー板を着けた状態で量ったら17、8キロあった)段々肩に食い込んできた。
 最近は低山の日帰り山行が多く、ザックも軽い(いつも大体10キロ以内)ので、久し振りの重さで体にこたえる。周りを見るとスキーを担いで登っている人はとても少ない。山スキーにシールを着けている人かボーダーだ。ボーダーはボードを背負っているが、いずれにしてもザックは小さい。

  1,866mのピークを巻き終わった頃に1回目の休憩をとった。休んでいる間にもどんどん登ってくる。やっぱり一般登山者はほとんどいない。ほとんどが山スキーかボーダーの人たちだ。若い人たちがとても多い。普段のハイキングや登山とは大違いだ。
小至仏をトラバース

 上がって来る人たちと言葉を交わし、10分ほど休憩して再び出発。 あまり急勾配もなく足元は雪でゴツゴツしていないので歩き易いのだが、なかなか尾根に出ない。
 それでも時々立ち止まって振り返ると尾瀬ヶ原も右下の方に見えてきた。天気と景色がいいので何とか頑張れる。これが一面ガスっていたら辛いよな。

 小1時間歩いて2回目の休憩をとった。いつのまにか周りには高い木が少なく、小至仏も正面に見えてきた。どうもオヤマ沢田代辺りだろう。 もう真っ白な尾瀬ヶ原が見渡せる。正面に燧ヶ岳が、その左に真っ白に雪を被った会津駒ヶ岳。右に目を向ければ日光白根山と右に武尊山が眺望できる。白根山は丸沼スキー場の上部も見える。いい景色だなー。山頂に行けばもっといい景色が見られるんだ。ガンバローッと。
小至仏を振り返る


 休んでいると一人の男性がやって来て「片品村観光協会のものですが、写真を撮っていいですか?」と聞かれた。ホームページに載るかもしれないので快く?撮ってもらった。まあボツだろうけどね・・・

 ここからの眺めが良く気持ちよかったので休憩が予定の10分を越えてしまった。稜線上に目標が見えているけどまだまだ先は長いのでもっと景色を眺めて居たかったけれど先へ進むことにした。

 小至仏の岩場を左に見て広大な斜面をトラバースに入った。写真を見た感じではこけたら大変な事になりそうで、ここはアイゼンを着けなければ駄目かなと思っていた。でも雪が適度に柔らかでアイゼンは必要なかった。
 小至仏を通過し一度やや下ると、あとは至仏山への最後の登りが待っている。もう目の前、手の届きそうな距離なのだがなかなか着かない。それでも一歩一歩近付いているのが分かる。
山頂で(マウスで壊れた靴)


 出発して3時間後ついに山頂に到達した。山頂も大勢の人で賑わっていた。360度の大展望で最高の気分だ。 至仏山には2、3回登っているがこんなに晴れたのは初めてだ。それにしても尾瀬ヶ原側はたおやかな山容だけど、逆の新潟側は切れ落ちていて険しさのある対照的な山容だ。

 写真を撮った後朝食の残りのおにぎりを食べ大休止。
 おかーさんがちょっと疲れ気味だったのと天気が良く気分良かったので気がついたら予定の30分を大幅に越える大休止になってしまった。

 山の鼻まではスキーで滑り降りるのでそれ程時間は掛からないだろう。それじゃスキー靴に履き替えさぁ出発。
燧ヶ岳と尾瀬ヶ原

 スキー靴のバックルを固く閉めたその時大アクシデントが起きた。
 バキッの音とともにシェルがものの見事に割れてしまった。それもご丁寧に左右両方とも。一瞬にして私の心が凍った。
 山スキー用のビンディングじゃないのでかかとが上がらない為、少しでも歩きやすいようにと、ウォーキングポジションのある古いスキー靴を持って来たのが仇となってしまった。あーあ!
 プラスチックが経年劣化で突然破壊する事は話には聞いていたが、まさか自分の靴が・・・。家で準備をしている時にちょっとそんな事が頭をかすめたのだが、現実になろうとは思っていなかった。テストしておけば良かったと思ったが後の祭りでした。

 こうなれば鳩待峠に戻るほかない。大きな時間のロスだが、鳩待峠を3時までに出発できれば3時間で何とか見晴しまで行けるだろう。もし下山に時間が掛かって遅くなったら見晴しへ行くのは諦めて帰ろう。
武尊山

 壊れたスキー靴を再びザックに詰め込み、おかーさんはスキーで下りるので私のスキー板を持ってもらい兎に角下山することになった。

 登ってきた道を速足で下り始めた。オヤマ沢田代辺りを過ぎ、樹林帯に掛かるとおかーさんが転倒し始めた。雪質が悪い上、背中のザックが重く私のスキー板を持っているので自由が利かないのだろう。木に衝突すると大変なので私のスキー板は自分で持つことにした。結局登り下りともスキー靴とスキー板を担ぐ事になった。

 途中立ち止まりはあったものの一度も休憩をとらずに鳩待峠まで歩き通した。
 鳩待峠に着いた時はかなり疲労してしまった。

 2時半前には峠に着けたので、弥四郎小屋に電話したが通じない。前橋の連絡先に電話して「6時ごろになるけどいいか」問い合わせたところ「時間は構わないけど、もうその頃は誰も歩いていないので危険だったら引き返すなど自分で判断して気をつけて来て下さい」との事だった。いざとなったら山の鼻で泊まる事も選択肢に入れて行くことにした。
下山途中、ハイポーズ


 そうと決まれば役に立たないスキー用具は車に置いとくため駐車場へ。ここで、朝が遅かったため自分の車で来た事が幸いした。これはプラスでした。

 鳩待峠へ登ってくる人たちとは何べんもすれ違ったけど、山の鼻への下りは私たちだけでした。夏道と違って川上川の川床を歩いているような感じで一気に山の鼻を目指した。40分あれば行けると思っていたが、そうは行かなかった。山の鼻の150mぐらい手前に分岐があり、看板に川上川が渡れないので尾瀬ヶ原へは右に、山の鼻は左と書いてあった。山の鼻から尾瀬ヶ原に行く橋が掛かってないのだ。川上川に沿って尾瀬ヶ原に向う。尾瀬ヶ原に出たところで5分の立ち休みをとった。

 陽のあるうちに見晴らしに着きたいのでもう少し休みたいけど先を急いだ。
夕暮れの至仏山(竜宮から)

 一面真っ白な尾瀬ヶ原、踏み跡を辿り黙々と進む。牛首辺りで橋を渡る。まだ太陽は高い位置にあるので何とか明るいうちに着けるだろう。

 遥か先に見える林が多分「竜宮」だろう。一面真っ白なので距離感が掴みにくいけど周りの山を見ると少しづつ近付いている。5時半までには竜宮に着きたい。私もおかーさんも疲れているけど歩みを止めない。

 1時間ほど歩くとずっと先に微かに小屋らしきものが視界に入ってきた。富士見峠からの尾根が張り出してきている。きっと竜宮小屋だ。小屋は段々その姿を明らかにしてきた。何人かの人が目に入ってきた。
 
 5時15分、やっと竜宮小屋に到着。ここまで来ればもう先は見えた。
 小屋の前のベンチに座って休憩した。雪かきをしていた小屋の人が、今年は1mぐらい雪が多いといっていた。 しばらく話をしてから見晴しへ向った。

 橋を2つ渡ると前方に見晴らしの小屋群が見えてきた。段々弥四郎小屋の緑の屋根と白い窓枠がはっきりしてくる。自然に足が速くなってきた。
もうすぐ見晴しだ

 本日お世話になる「弥四郎小屋」にやっと到着。長い一日だったな。でも何とか6時前に着く事が出来た。それにまだお日様も出ている。
 早速小屋に入るともう夕食時間だった。 お風呂に入りたかったけど、小屋の人に悪いので「先に食事をします」と言ったら、「お風呂へ先に入ってからでいいですよ」とのやさしいお言葉に甘え、先にお風呂に入ることにした。
 小屋のスタッフに、「まだ小屋開けしたばかりなのでお風呂は一つしか使えず、男女交替で使用する。男子トイレは水が出ないのでバケツの水で流す」等の説明を受け、新館の4畳半の部屋へ案内された。 たまたまこの時間帯は男の入浴タイムだったので、私はすぐにお風呂へ。
 広いお風呂に一人で浸かり、今日一日の汗を流した。頭には何杯もお湯を掛けたので少しはスッキリした。鏡を見ると顔が日に焼けて真っ赤になっていた。
 お風呂から出て食堂へ行き、缶ビールをグイーと喉に流し込む。美味い!
 夕食を終えてコーヒーを頼むと、まだコーヒーを淹れるスタッフが来てないのでダメだった。ここのコーヒーは美味しいのに残念。
 部屋に戻り、おかーさんはお風呂へ。しばらくしてお風呂から上がって来たので明日の相談をした。 協議の結果、尾瀬沼縦断は来年にして、明日はのんびり尾瀬ヶ原を歩いて鳩待峠に戻ることにした。


 【3日目】 5月4日

尾瀬沼   1,665m 2006年5月5日
天気:晴れ
到着時間 出発時間 区間時間 休憩時間 総合時間
 見晴し 7:36
 休憩(白砂峠付近) 8:45 8:50 1:09 0:05 1:09
 白砂田代 9:23 9:23 0:33 1:47
 沼尻 9:44 10:10 0:21 0:26 2:08
 三平下 11:10 11:25 1:00 0:15 3:34
 一ノ瀬 12:44 12:50 1:19 0:06 5:08
 大清水 13:32 0:42 5:56
 合計時間 5時間04分 0時間52分 5時間56分
 
 5時前に目が覚めると外はもう明るくなってきた。今日も天気が良さそうだ。
燧ヶ岳の肩から日の出

 まだ日の出には早いけど、カメラを持って外に出た。この時おかーさんはまだ寝ていた。

 何人かの人がやはりカメラを持って尾瀬ヶ原を見ている。私もその仲間に入り、朝の尾瀬ヶ原を眺めた。山裾が少し靄っていて幻想的だ。

 そのうち燧ヶ岳の山頂右側が明るくなってきた。そろそろ日の出が拝めそうだ。このころにはおかーさんも外に出てきていた。

 陽の光はどんどん明るさを増し、やがて燧ヶ岳の右肩に太陽の強烈な光が射してきた。日の出だ、シャッターチャンス!
 そうこうしている内に朝食の時間となり食堂へ行った。もう出発する人もいる。
朝の至仏山

 私たちは急がないので、のんびりムードで朝食をとった。隣の席に座った若い人が昨日見晴らしから沼尻まで往復したと言っていた。道は踏み跡もあり、分かり易かったそうだ。
 この時、私の頭には沼尻から尾瀬沼を眺めている自分が浮かんでいた。

 支度して外に出ると、これから尾瀬沼へ行くというカップルがいた。そうしたらもう私の心では尾瀬沼に行くことがほぼ決定していた。あとはおかーさんの了解を得るだけ。おかーさんはちょっと難色を示したけど結局行くことになった。

 過去に何度か通った木道(もちろん今は雪の下)入り口から歩き始めた。
 踏み跡を辿って進んで行くと段々燧ヶ岳の左に向かって行く。あれっ、ちょっとおかしいな。これじゃ燧ヶ岳への登山道に行っちゃう。尾瀬沼には右に回っていくはずだ。地図を出して確認する。やっぱり道を間違えている。
弥四郎清水


 踏み跡のない雪の上を横断して道を修正した。すると一本の踏み跡を見つけた。周りを見ると赤いペンキが塗ってある木があった。こっちだこっちだ、あー良かったと胸をなでおろす。どうもスタート地点が違っていたみたいだ。

 ここから再び踏み跡を辿り、赤いペンキを確認しながら進んだ。 夏道と違いかなり沼尻川沿いに道は続いている。夏は樹林帯を登り白砂峠を通るが、峠を右に巻いているようだ。何しろ木道がないので良く分からない。でも赤いペンキを頼りに歩いていった。私たちの先に2組、後に3組ぐらいのハイカーがいる。

 そのうち沢を渡り、トラバースが多くなった。右下は大きな沢に切れ落ちている。慎重に一歩一歩進める。
コガラ(白砂峠付近で)

 1時間ほど歩いたところで5分間立ち休みした。この間、途中で先行していた1組を抜いたので、後には4組以上いるはずなのだが、1組しか確認できなかった。

 ここから道は急な登りになった。もしかしたら白砂峠への登りかと思ったが登り切っても峠という感じがしない。 やがて見覚えのある風景が目に入った。そう白砂峠の下り、前方に白砂田代が広がっている。
 下りきると一面雪野原の白砂田代にでた。3年前だったか、N君が写真を撮ろうとして地塘に落ちた場所だ。N君その後どうしているかな?

 湿原の真中を縦断して再び樹林帯に突入。沼尻川に沿って20分も歩くと目の前が大きく開け、尾瀬沼が広がっていた。休憩所が雪に半分埋もれている。
白砂田代

 大きく息を吸って、初めて見る白い尾瀬沼を見渡す。遂に来たぞ雪の尾瀬沼に。私たちの他には誰もいない。独占です。

 しばらく佇んでから休憩所へ。建物にベンチ?が付いていたのでそこに座って休んだ。ちょうどいい日向ぼっこだ。尾瀬沼を歩く前にちょっと腹ごしらえ。
 休憩を終える頃先程の3人グループがやって来た。「尾瀬沼は渡れますかね?」と聞くので「渡れると聞いてます。今から私たちが渡るので、見ていて突然消えたら無理だと思ってください」等と冗談を言った。

 いよいよ今日のハイライト、念願だった尾瀬沼を歩いて縦断する時がきた。
 沼尻川の流れ出し付近から尾瀬沼に足を踏み入れた。最初は何となく不安だった。
 徐々に陸地から離れて行く。耳を澄ませてももちろん氷の軋む音はまったく聞こえない。
沼尻の休憩所

 氷に積もった雪の上をゆっくり歩いて行く。自分達が沼の上に立っているのが信じられない。10分ぐらい歩くと南岸コースの岸近くに融けている所が見られた。ドキッ!なるべく離れて歩く。
 万が一に備え、おかーさんは私から5メートル以上離れて後を歩いてもらう。

 真中辺りまで来ると、雪がなく氷の表面が融けている個所があった。またまた離れて歩く。なかなか三平下に着かない。すれ違う人もいない。遠くに一人で尾瀬沼ビジターセンター方面から沼尻に向かう人がいた。

 小1時間歩いて三平下のやや右の岸よりに着いた。見ると岸と並行にクラックが走っている。
 近づいてストックを差し込んでみたが氷はまだかなり厚そうだった。なるべく岸と段差のない所を選んで岸を目指した。
氷上の雪の裂け目


 クラックを越えると岸側は表面の雪が融けて足跡に水が溜まっていた。そこを通り過ぎるとどうやら陸地に上がったみたいだった。とりあえずホッとする。
 こうして私たちにとって歴史的な尾瀬沼渡りは無事に終わった。
 地図で見るとちょうど福島県と群馬県の県境を歩いてきたことになる。

 樹林帯を三平下の広場に向かった。
 踏み跡はほとんどないけど雪が締まっているのでせいぜい足首までしか潜らない。尾瀬沼休憩所と尾瀬沼山荘は雪の中にひっそりとまだ眠っていた。

 沼畔には何人かのハイカーが休んでいた。みんな大清水から来た人たちだ。ここで休憩して、燧ヶ岳をバックに氷と雪に閉ざされた尾瀬沼をしっかり脳裏に刻み込んだ。しばし休憩の後、大清水へ向かった。
燧ヶ岳と尾瀬沼(三平下で)

 小屋の間を抜けて、夏道だと樹林帯を左に登って行くはずだが、踏み跡と木に着けられた赤いリボンは右に導いていた。最初にちょっと登りがあっただけで、その後はほとんど登りがなかった。

 いつ峠付近を通ったか分からなかったけど、いつの間にか樹林帯を抜けて高みに出た。
 ここからは一の瀬に向かって最初は急降下が始まる。雪の急降下はとても怖い。幸い雪が柔らかいので踵をしっかり食い込ませゆっくり下りて行く。

 九十九折の雪道を慎重に下り、急斜面を無事に下り切った。
 ここからは夏なら木の階段を下るのだが、今は雪の上を歩くので夏より歩き易い。
三平峠からの下降


 三平下から1時間20分ほどで一の瀬の休憩所に到着した。ここで一休み。休憩所はまだ雪に閉ざされていた。ただ林道は除雪されていて砂利道が出ていた。周りは1メートル以上の雪の壁に囲まれている。
 砂利道は所々雪解け水が溝を掘り、川のように流れていた。林道歩きでつまらない道だが、今までみたいに危険はないので快調に下った。

 一の瀬からはほぼ40分でついに大清水に着いた。
 大清水は大勢の観光客で賑わっていた。私たちは鳩待峠へ車を置いてあるので、1台だけ停まっていたタクシーで鳩待峠に向かった。

 タクシーから見ると大清水湿原の水芭蕉はまだちょっと時期が早いようだった。
一ノ瀬(マウスで雪の壁)


 鳩待峠で車を回収し、一昨日泊った戸倉の玉泉でお風呂に入らせて貰った。帰りの関越高速道も渋滞だったが、無事に7時半頃ヨーゼフとクーの待つ我家に帰った。

 今回は事前準備の漏れで規制時間を知らなかったことやスキー靴が壊れたりと、予定外のことが起きてしまった。でもそれらのことが結局は予定から外した「尾瀬沼渡り」をすることに結びついた。
残念だったのは至仏山の大斜面を颯爽?と滑降できなかったこと。来年に取って置きます。でも、おかーさんはまたこの時期に来るのはいいけど、山スキーはやらないと宣言してます。1年かけて説得しなきゃ・・・。
 雪の至仏山を登り、雪の尾瀬ヶ原と尾瀬沼を歩き、きつかったけど貴重な体験ができた山行だった。


   


 「大菩薩」に行きました。先週、おかーさんと今度はどこへ行こうかと話してた時、「三頭山」の話もあったけど、大菩薩の稜線を歩きたいと言う私の案におかーさんが賛成してくれた。
 今回は唐松尾根を登って、富士山を見ながら稜線を歩く予定だ。


大菩薩   2,057m 2006年5月21日
天気:晴れ
到着時間 出発時間 区間時間 休憩時間 総合時間
 福ちゃん荘 9:20
 雷岩 10:20 10:20 1:00 1:00
 大菩薩嶺 10:26 10:30 0:06 0:04 1:06
 雷岩 10:35 11:05 0:05 0:30 1:15
 賽の河原 11:30 11:30 0:25 2:10
 親不知の頭 11:33 12:10 0:03 0:37 2:13
 介山荘 12:15 12:25 0:05 0:10 2:55
 福ちゃん荘 12:52 0:27 3:32
 合計時間 2時間11分 1時間21分 3時間32分
 
行ってきまーす(福ちゃん荘で)

 天気予報では今日は晴れ。予定通り富士山を見ながら大菩薩の稜線を歩けるか楽しみだ。
 5時に起床して6時には家を出発。ヨーゼフとクーは置いていかれては大変と、いつも遅いのに今日は早起きしていた。

 中央高速で行く方法もあるけど、今日はあえて柳沢峠越えで青梅街道を行ってみることにした。
 青梅までは道路が混んでいたけど、奥多摩を過ぎる頃には道も空いてきて快調に走れた。丹波村を過ぎた辺りでヨーゼフたちの為に1回休憩して柳沢峠で2回目の休憩をとった。
 裂石から長兵衛山荘のある登山口、上日川峠へ。ここには結構広い駐車場があるけど車でいっぱいだった。
 私たちは福ちゃん荘の駐車場へ行くので、混雑を尻目に長兵衛山荘の横手から狭い林道へ。登山者も歩いているので遠慮しながら走って行く。
富士山(唐松尾根で)


 福ちゃん荘には9時ごろ到着した。ここは食堂か売店を利用すれば駐車できる。
 駐車場には私たちが2台目。支度をしている間にもう1台が停めに来た。
 支度を終えると、車のキーを預け出発した。

 今日は唐松尾根を登るので、福ちゃん荘の横手から樹林帯に入って行く。
 最初は緩やかな林道風(と言っても車が通れるほど広くない)の登山道を登って行く。名前どおり周りは唐松の林だ。足元には唐松の落ち葉が、上を見ると緑の新芽をつけている。
大菩薩嶺で

 やがて傾斜がやや急になってジグザグになってきた。
 何組かのグループとすれ違う。もう下山してくる人たちが結構いるものだ。私たちが犬連れ、しかもシーズーとミニチュアダックスなので、みんな一様に驚いている。そして感心しながら「頑張ってね」と声を掛けてくれた。

 周りが唐松から樺の木になると左前方に大菩薩の稜線が見渡せてくる。
 登り一方だった道が平坦からやや下りになると前方に雷岩に繋がる笹の山腹が見えてきた。

 このころから足元は岩混じりの道になってきた。それでもクーは果敢に自分でジャンプしてこれはと思う段差をクリアしていった。ヨーゼフにはこの
おやつ頂き!(雷岩で)
程度の岩は何の問題もない。ほぼ直線状に登って行く。いつもながらヨーゼフのジャンプ力にはホントに感心する。これが家ではいつもゴロゴロ寝ている同じヨーゼフなのか・・・。

 段々急になった道を汗をたらしながら登って行く。振り返ると眼下の森の中に「福ちゃん荘」の青い屋根が見える。右のほうには塩山の市街、そしてやや左に富士山がその雄大な姿を現した。と思ったら、残念なことに富士山は頭の方しか出してくれなかった。白い厚い雲が肩から下を包んでいた。これは早く写真に撮らないと雲に隠れてしまうと早速シャッターを押した。

 最後の急登を登りきると雷岩に着いた。
 もう10組以上のハイカーが休んでいた。私たちもちょっと一休みと思ったが、とりあえず大菩薩嶺まで行って来ようと、樹林帯に入って行った。
賽の河原で


 樹林帯は水溜りがありジメジメしていた。ヨーゼフとクーはお腹がグショグショになってしまうので抱いて行くことにした。
 時々丸太の道を歩き、木の根の出た湿っぽい道を5分ほどで標識のある山頂に着いた。以前来たときは薄暗い印象だったが、今回は以前より何だか明るく感じた。木を間引きしたのか、まだ木の葉があまり繁ってないせいかも知れない。
 そうは言っても展望がないのは以前と同じ。しかも虫が頭上に集まってくる。ヨーゼフより重いクーを抱いたおかーさんが着いたところですぐに写真を撮った。

 雷岩に戻ると岩の一角に陣取り、先ずはヨーゼフとクーに水をあげ、岩の上で一休み。
 案じた通りもう富士山は厚い雲に覆われて頭の天辺辺りしか見られなかった。ここはこんなに天気が良いのに残念だ。どうも今年は富士山には恵まれていない。
大菩薩の稜線(下に避難小屋)


 湿度が低いのか汗をかいたわりにはベトベトしてない。家を出る時には強かった風が、ここでは弱風で心地良い。 食事にはまだ早いので、のんびり日向ぼっこを楽しんだ。その間にも大菩薩峠から、唐松尾根からどんどんハイカーが登って来た。中には20名ぐらいのグループもいた。

 30分ほど休憩して今日のハイライト、大菩薩峠までの稜線歩きに出発した。
 本来なら富士山や南アルプスを眺めながらである筈だったが、でも天気が良いのと緩やかな道なので楽しい時間だ。
 ヨーゼフとクーも舌を出しながらも尻尾を振りながら歩いて行く。行き会う人たちにヨーゼフとクーは人気者だ。それに応えてヨーゼフとクーは愛嬌を振りまいていた。
親不知の頭で

 最初に神部岩を通る。ここは広場になっていて何組かのハイカーが休んでいた。
 ここから下って行くと下の方に小屋が見えてくる。「賽の河原」の避難小屋だ。
 登って来る人たちが後を絶たない。今日大菩薩にはどれだけの人が入っているのだろう。しかも今日は中高年ばかりではなく、若い人たちもかなり行き会った。

 賽の河原で写真を撮ってちょっと登り返すと「親不知の頭」へでる。展望台?もあり、広場になっている。
 ここからはもう介山荘の赤い屋根がすぐそこに見える。 端の方の岩場で昼食休憩にした。
大菩薩峠

 親不知の頭からは5分も下れば大菩薩峠の介山荘に着く。ただ最初は岩がゴツゴツしているのでヨーゼフとクーは抱いて下りた。 大菩薩峠も人で賑わっていた。ここにはまだ新しい休憩所と公共トイレができていた。
 犬を連れているので興味を持った人が話し掛けてくる。

 福ちゃん荘に1時ごろには戻りたいので話もそこそこに出発した。
 歩き易い道なのでクーも安心して歩かせられる。
 勝縁荘(営業しているのかな?)で橋を渡り、ここから舗装された林道をやや登り。再び下りになると直ぐに富士見山荘だ。
ここからは5分足らずで福ちゃん荘に着いた。
 福ちゃん荘で車のキーを受け取り、お汁粉を食べた。ついでに福ちゃん荘のラベルを貼ったワインを赤白買って帰途に着いた。
 帰りも往きと同じ青梅街道を通った。途中、奥多摩湖で休憩し、一部渋滞もあったが無事我家には5時前に着いた。
 今日は一日中天気が良く、蒸し暑くもない快適なハイキング日和だった。
 ヨーゼフとクーも良く頑張りました。みんなに誉められた良い一日でした。  


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